ジョイ・スプリング / 村田浩＆ザ・バップ・バンド

過去に発売された新録音のSACDで、かつジャズで、かつ日本人のアルバムで、こんなに楽しめる、そしてリラックスできるジャズアルバムがあっただろうか？そんなことをこのアルバムを聴きながら考えた。

気の合う仲間というには年が離れているメンバーですが、音楽を通すと年齢なんて関係ないのだなあ、と改めて感じます。全体にはクリフォード・ブラウンを師と仰ぐ村田 浩氏の思い入れ深い選曲なのはよくわかります。しかしそれだけに陥らず、きちんとアルバムを聴く人が楽しめる選曲、構成になっているのはなんともセンスが素晴らしい。村田氏のトランペットはよく唄う。そしてまわりのサックス、ピアノとの絡みがまた素晴らしい。その全てが自然体。技術を前面に押し出すのでもなければ、わけのわからない間で高音をぶっ放す、なんてこともしない。全ては楽曲に敬意を表した演奏、編曲なのだ。だから全曲、曲の魅力を最大限に引き出している。うーん。自然体。

バップ、ハードバップにありがちな、「１フレーズは分かりやすいのに、その後はよくわからなくなっていく」なんて事とは無縁の分かりやすいメロディラインは、ジャズにとってとても大事な事だと思う。聴き始めたらラストまで一気に聴いてしまう、そんな今時珍しくなった力を持つアルバムではないだろうか。全曲いいけど、個人的にはマイルスの名曲Digかな。

そして、この素晴らしい内容に加え、なんといっても今後オーディオショウでいたるブースで聴く事になるのではないかと思える高音質DSD録音。レコーディング・エンジニアを務めた広兼輝彦氏の腕が冴え渡った出来栄えです。
最近の録音には、高音質だけど、なぜか巨人が唄ってる、楽器を奏でてる風な録音も多いですが、このアルバムはリアルな音像がそこにあります。詳しいレコーディングレポートがライナーノーツに載っているのも、オーディオファンにはスピーカーセッティングのヒントにもなるでしょう。
CDとしても十分高音質ですが、やっぱりSACDプレイヤーで聴きたいですね。

純粋に良質なジャズアルバムを探している人に、そしてオーディオファンに、ぜひぜひ聴いてほしい完成度の高いアルバムです。


01 Joy Spring
[Music By Clifford Brown]
02 Dig
[Music by Miles Davis]
03 Cookin'
[Music by Lou Donaldson]
04 I Don't Stand A Ghost Of A Chance With You
[Music by Victor Young]
05 Along Came Betty
[Music by Benny Golson]
06 Fungii Mama
[Music by Blue Mitchel]
07 Our Delight
[Music by Tadd Dameron, Words by Sammy Cahn]
08 All The Way
[Music by Jimmy Van Heusen]
09 Flossie Lou
[Music by Tadd Dameron]
10 Steeplechase
[Music by Charlie Parker]


村田 浩(リーダー、トランペット)
岡田 嘉満(テナー・サックス)
松本 全芸(ピアノ)
矢野 伸行(ベース)
富岡 慶太(ドラムス)